ゆさぶるカルチュラル・スタディーズ
ゆさぶるカルチュラル・スタディーズ
コギャル、都会と地方、モバイルメディア、F1、音楽、フェミニズム、漫画、ボディ・プロジェクト、社会運動、アート等、多様な文化の側面から逆なでに読み解くカルチュラル・スタディーズ入門。またカルチュラル・スタディーズとはなにか? 今までのカルチュラル・スタディーズの軌跡を概観しつつ、これからの課題についても示唆した意欲作。
目次
第1章 モバイルメディアの殻・繭・棘(ケイン樹里安)
第1節 殻と繭
第2節 監視vsチル
第3節 棘
第4節 夢と悪夢のスマートシティ
第5節 全力と諦念
研究コトハジメ:深夜のマクド
第2章 「ここ」ではない「どこか」へ:都会と田舎をめぐる若者の物語を移動/越境から考える(清水友理子)
第1節 移動は「田舎から都会へ」から「都会から田舎へ」へ?
第2節 どこへでも行ける?フラット化=ポスト・アーバン化する社会
第3節 さらに遠くへ、あるいは、ずっと地元のままで?
第4節 「田舎vs都会」を超えて
研究コトハジメ:フィールドに出る一歩手前の準備:五感を働かせる
第3章 奪い・奪われ・奪い返すスタイル:サブカルチャーとしてコギャルを読み解く(関根麻里恵)
第1節 サブカルチャーとは何か
第2節 コギャルというサブカルチャー
第3節 スタイルをめぐる闘争と交渉
第4節 進化する(コ)ギャルスタイル
研究コトハジメ:『GALS!』が教えてくれたこと:フィクション作品が与えた影響について
第4章 フレンチポップのなかのジェンダー構造:ラブソングにおける対抗的実践を読みとる(中條千晴)
第1節 フレンチポップのラブソングに見る男女の関係性
第2節 現代フランスとフェミニズム
第3節 アンジェルの『Balance ton quoi』に見る実践
第4節 結論(づけないために)
研究コトハジメ:ポピュラー音楽を分析する
第5章 レズビアンの剥片化に抗して:『作りたい女と食べたい女』を読む(竹田恵子)
第1節 セクシュアル・マイノリティの存在・アイデンティティ・権利
第2節 ポルノ、そして「百合」から「レズビアン」の表象へ
第3節 「レズビアン」存在の剥片化に抗して
研究コトハジメ:「自分のありかたを発明する」
第6章 スポーツのファンダム:クルマ文化とF1(加藤昌弘)
第1節 参加型文化としてのF1のファンダムを捉え直す
第2節 F1と映像メディア
第3節 グローバルなスポーツはナショナリズムを変えるのか
第4節 グローバル資本主義と格差の問題
第5節 女性とF1のかかわり方
第6節 F1を「見る」ことと「遊ぶ」こと
研究コトハジメ:「好き」を仕事(研究)にすべきか
第7章 創られる理想、作られる身体:私たちはどのようにボディ・プロジェクトへと向かうのか(竹﨑一真)
第1節 身体をどうとらえるか?
第2節 ポスト工業社会と身体の理想
第3節 コンフィデンス・カルチャーとしてのボディ・プロジェクト
第4節 身体から社会をゆさぶる
研究コトハジ:記号であり生モノでもある筋肉
第8章 「黒い暴動」:移民たちはなぜ踊り始めたのか(稲垣健志)
第1節 奴隷たちの隠れた抵抗
第2節 「ロンドンは僕のための場所」か?:イギリスにおけるレイシズム
第3節 カーニヴァルを再創造する
第4節 「危機」を取り締まる
研究コトハジメ:「真似る」という文化実践
第9章 『三つ目がとおる』と失われた過去の〈場所〉マヤ文明(鋤柄史子)
第1節 二つの表象:三つ目とマヤ文明
第2節 マヤ文明表象とポストコロニアリズム
第3節 戦後日本のオカルトカルチャーと手塚のジレンマ
研究コトハジメ:ゆさぶる「目」を身につける
第10章 オンライン空間の文化と社会参加:韓国におけるウトロ地区支援の一端(全ウンフィ)
第1節 オンライン空間に浮かび上がる「社会」
第2節 文化を基盤とする社会空間
第3節 遊びの空間を橋渡しする人々
第4節 サブカルチャーの空間性からみる社会参加
研究コトハジメ:場所に込められたもの・こと
第11章 人と歴史をつなげる現代アート:現代在日コリアン美術を例に(山本浩貴)
第1節 現代アートとは何か
第2節 ソーシャリー・エンゲージド・アート
第3節 リレーショナル・アートと敵対
第4節 現代在日コリアン美術:呉夏枝と琴仙姫
第5節 現代アートの力と可能性
研究コトハジメ:現代アートを「研究」する
第12章 文化の「遺産化・財化」に抗う文化実践:「内灘闘争――風と砂の記憶――」展をめぐって(稲垣健志)
第1節 内灘闘争
第2節 文化を「遺産化・財化」するということ
第3節 「風と砂の記憶」展2018・2021
第4節 それがアートである理由
研究コトハジメ:ぶらぶらのススメ
第13章 「カルスタ」を逆なでに読む:カルチュラル・スタディーズをゆさぶるために(稲垣健志)
第1節 カルスタの「誕生」
第2節 カルチュラル・スタディーズの翻訳:カルスタはパンクに出会ったのか?
第3節 カルチュラル・タイフーンの発生:台風はどこに上陸するのか?
第4節 カルスタをどう逆なでるか
研究コトハジメ:それでもやはり
編者紹介
稲垣 健志(いながき けんじ)
金沢美術工芸大学美術工学部准教授。
主著(論文)に、‘Radicals Strike Back: A Memorandum for the Cultural Studies of Black Radicalism in Britain’『金沢美術工芸大学紀要』第65号(2021年)、「カルチュラル・スタディーズを裏返す―A. シヴァナンダンをめぐるいくつかの断章」『年報カルチュラル・スタディーズ』Vol.10(2022年)など。訳書に、ガルギ・バタチャーリャ『レイシャル・キャピタリズムを再考する―再生産と生存に関する諸問題―』(人文書院、2023年)。